こんばんは、アジです。
「来年結婚することになりました」
そう連絡をもらったのは、たしかまだセミが鳴いていた頃。
ほんの短期間で目覚ましい成長を遂げた彼は、ついに一生添い遂げたい相手と出会えたらしい。
無垢な彼
出会ったばかりの頃、社会という荒野に放り出されるにはあまりにも無垢すぎる彼に、少しばかりの心配と今後の活躍を期待していた。
活躍といっても大きな事を成し遂げるとか、有名になるとか、大金を手にするとかじゃない。
小さくてもいい、素朴でもいい、誰かに認めてもらわなくてもいい。自分の心に光を灯せられるように、そんな世界が彼を包んでくれたなら。
セミ
1つ前の夏、セミの鳴き声が薄れていくころ、環境が変わった事で私たちが顔を合わせる事もなくなった。
そして再びセミが鳴く頃に届いた結婚の報告。
無垢な彼が見つけた光はきっと美しいのだろう。これからさき彼の見る世界がどんなものであろうと、きっと大丈夫。
ハッピーエンドの映画鑑賞後、映画館を出れば物語とは別の世界が待っている。私と彼の人生はこの先交わることはない。
気持ちに応えることは出来なかったが、人の人生の通過点に関われたことを嬉しくさえ思った。
結婚するならケジメをつけよ
結婚の報告を受けてしばらくした頃、久しぶりに届いた連絡。急にどうしたのだろうか、彼女に送るものを間違って送ってしまったような文面に、独り言のようなつぶやき。
内容からして私に宛てたものだとは理解したが、もうすぐ結婚するというのにこんなようではいただけない。
彼女を大切に想うのならば他の異性との交流も控えねばならないし(お互いに了承しているなら良いが)、ましてや想いを抱いていた相手に連絡をとるなどもってのほか。
結婚するならケジメをつけよと一喝するのがうんと年上の私の役割りかもしれないが、婚約相手がいながら他の異性に連絡とるくらいの不純さを身につけた彼は、もう無垢なあの頃の彼ではない。
一喝などしなくても、未読スルーという状況から彼は何かを学ぶだろう。
「大切にしたい相手を大切に出来ないやつはカッコ悪いぞ」